「ハル様には、帰る場所があります。帰るべき場所が……あります。待ってくれている人が、います」



なら、どうして震えているんだ。

そんなにも泣きそうで、俺の目をいっさいと見てくれないんだ。


そんな言葉を真に受けられることのほうが難しいよ。


ここまで俺が近寄っても気づかないくらい、なにを取り繕うことに必死なのか。



「…同じだよ、そんなところも」


「っ!」



似ている、だったのなら俺だって諦められた。

似ているきみに幻想と執着を抱いて重ねるというなら、俺は最低な男だ。


でも違う。


おなじ、なんだ。


確かに顔立ちは違うが雰囲気が同じ、仕草が同じ、字が同じ、絵が同じ。

もし当時のきみに声が出ていたら、こんな音だったのだろうと思わせてくる。



「ハルさ───、っ、」



そこまで取り繕うなら拒まなければ駄目だろう、ここだって。

初めて重ねに向かった唇は、案外すんなりと合わさってしまった。



「ん…っ!はる、さ…っ!」



振った男と交わすには甘くて優しすぎる。