「しっ、支配人っ、こちらは何事でございますか…!」
「どこに行っておられたのですか…!?お風邪を引かれてしまっては大変です…!」
「かずさっ、一咲はどこにいるの!はやく来なさい一咲…!」
ずいぶんと勝手なひとだ。
探してこいと言ったくせ、今度は戻ってこいと。
目当ての人間はどこにも見当たらず、別館へ移動するため、もう1度ロビーに戻るまでの途中で。
騒がしい従業員たちの声、慌ただしく自分の名前を呼ぶ世話役の声。
とうとう彼が帰って来てしまったのかという絶望。
どちらにせよ下がる気持ちを持って、極限までゆっくりと向かった。
「透子さん、どうかされましたか」
「どうかされましたか、じゃないわよ!倒れていたんですって!海岸脇に…!男性用の着替えとタオルっ、はやく2人ぶん用意なさい!」