「お国のため。そう命令されてしまえば、当時の日本人にとっては天命と同じことよ」



父さんもそうだったのだろうか。

国のために、命令のために、あんなにも未来ある若者たちを人物兵器に変えようとしたのか。


そうか、それなら仕方がない。


───などと、言えるわけがないだろう。



「だが、じつは奴はとてつもない反逆者でもあったとは」



反逆者……?父さんが……?


父は最後、“国のために”と、言っていた。

崩れ落ちる戦艦のなか、国のため、いずれ来たる世のため───と。



「息子だけは救うという裏切りを、同時に起こしたのだ」


「………どういう……こと、だ」


「おぬしは生きておる。たとえ時間が違ったとて、時を越え海を渡り、生きておるでないか、今。…それが答えだとは思わんかね」



俺は生きている。

生存者はありえなかったはずの、あの環境で。

俺だけが船のなかを立っていた。