資料だらけの部屋のなか、俺は咄嗟に爺さんのそばへ寄る。

震える手でツクモさんが手にした写真を奪い、まじまじと見つめた。



「こやつはワシの母方の先祖の……んんっと、そのまた兄弟と言っておったかの」



────伊作だ。

俺の、俺の友人だった男だ。


そしてその写真にはかつての友人だけでなく、同じ軍服と官帽を合わせて敬礼している俺までも。



「そうだ…、これは海軍兵学校を卒業したときの……」



思い出した。
撮ったんだ、記念にふたりで。


この大日本帝国海軍として、立派な海軍兵になろう。

そう、誓いを立てて。



「これがワシの研究をぐんっと進めてくれた。…なあ、陸奥 忠義の息子よ」



そういえば俺の父親の名はそれだったと、どうしようもない焦燥感が胸を埋め尽くす。


悲しさ、怒り、虚無。

どう表したらいいのか分からない、この気持ちだけは。