「泣かせるつもりじゃなかったんだ。ただ…本当に、止まれなかった」
そんなに優しく触れなくったって壊れないのに。
むしろあなたの場合は、もっと強引に引き寄せてくれてもいいのだと思う。
「これも…、もとに戻るために必要なことだと…思うので…」
「もうしない、誓う。…きみには優しくしたいんだ」
いやだ、しないなんて言わないで。
そんな寂しいこと、いやです。
目線で訴えた私のおでこ、微かに残った色を持ちながら小突かれた。
「…こら。本気で嫌がらないでどうする」
だって、嫌じゃなかったもの。
もし誰もこない部屋の、布団の上だったとしたなら。
私はあなたを止めることはしなかった。
しなかったよ、そんなこと。
そのあと仕事に戻った彼は。
普段であれば1度で運べてしまう大きな荷物を、なんと初めて小分けにして運んでいたらしい。
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