明治を生きていたひと。
ずっとずっと過去を生きていたひと。
いいの、そんなの。
なんだっていいの、そこは。
「すごく…幸せそうな顔をしてる」
「…はい」
「花は好き?」
「…はい」
「静かな場所も、好きか?」
「…はい」
聞かれたことにうなずいて、そこに音だけを乗せるような返事。
懐かしさを思い出させてくる何気ない喜びに、私はこれほどない幸福を感じた。
周りに人が来たなら埋もれてしまう蕾。
そんな“つぼみ”に屈み込んで、やさしく話しかけてくれる人がハル様だ。
「かずさー?まったくどこにいるのよ一咲ったら!支配人から電話よーー?スマホにも繋がらないし……もうっ!」
透子さんだ。
透子さんの声だけならまだしも、“支配人”という言葉がどれだけ空気を壊してくるものか。
私のことを探している。