ただ、不思議なことは。
遠く離れた孤児院にいた私がわざわざ選ばれたということ。
それは亡くなった彼女にとてもよく似ていたからだ。
私の────声が。
『名前は?』
『……かずさ』
『かずさ…か。一咲、俺はお前を1番にはできないけど、めいっぱい可愛がってやろう。だから早く大きくなってくれよ』
悲しかった。
目をつむって、想像を働かせながら彼は私と会話を楽しむ。
せめて似るならば、顔が良かった。
瞳を伏せられて届けられる優しさなど、私からすれば単なる侮辱でしかなかった。
『成長するともっと愛美(あいみ)の声に似てくるのかと思うと、楽しみだ』
花江家とは深い親睦があった工藤家もまた、かの有名なグランドホテルを経営している。
両家が繋がることでお互いにとって規模拡大、利益獲得という、欲だらけの利害の一致。