「俺の名前は……陸奥 時榛。21歳で、海軍兵になる…予定だった」



絵にしたい。

いますぐ、風車は後回しでいいから、絵にしなくちゃ。

物憂げで美しいその横顔を、いつまでも留めておきたい。



「父は海軍の中尉を務めていた男で、母は勉学に長けた頭のいいひとだった。俺が生きていたのは───…今から150年近く前の、明治」



こんなふうに、私はいつかにも絵に記そうと思ったことがある。

いつだったかは不明。
あやふやすぎる漠然とした感覚。


でもそれは、たしかに“私”だった。


あなたを見つめている、私なの。



「人物兵器開発の実験台として……俺は唯一の成功者だったのだろう。あの日、俺は船から海に投げられて…、気づけばこの時代にいた」



だから記憶喪失と、嘘を言った───。



「すまない。……ごめん」



逃げ出したかった日々に訪れた、ちょっとだけ不思議な彼との、不思議な毎日。

それはとても、私には優しくて甘すぎる。