ろうそくに灯された火のように揺れている彼の炎が、迷っては諦めを浮かべるみたく火力を弱めていく。



「……戻りたくとも、もう戻れないんでしょう」


「いいや、そんなことはないぞ」


「戻れる、のか…?」


「そうじゃないかと思っている方法がひとつある。まあ…これもワシの実験よの。そのために───」



視線が移された先には、私。

お嬢さんを呼んだのだ───と、おじいさんの髭に隠れた唇が伝えてきた。



「おぬしらはまだ夫婦というわけではなさそうだが、恋人同士であれば問題はあるまい」


「えっ」



なにも構えていなかったため、思わず声が出た。

ハル様も同じように目を丸くさせては、そのあと切なそうに伏せる。


私は……ゆっくりと顔を横に振る。



「あの…、私たちは夫婦でもなければ恋人同士でもなくて…」


「なに!?違うのか!?」


「…はい」