「これは単なるドーピングではない」



今日は1度も別の資料に目を通していなかった。

むしろ彼の本題はすり変わってしまったかのように、前回から引き続いた本物の空気が流れている。



「レベルが遥かに想像以上での。いまの時代ですら再現不可能なほど、強力と見える」


「……どうやって、そんなものを…」


「作り出したんだろうな?」


「………、」



自然と起きたものではない───私ですら、ふたりの会話から読み取れた。

ハル様の少し変わった特殊体質は、誰かの手によって人為的に生み出されてしまったものなのだと。



「定春、おまえはどうしたいのだ」


「……どうしたい、とは」


「もとの身体に戻りたいか?ワシのように物質の正体を突き止めたいか?それとも……自分の身体を改造した人間を見つけて懲らしめたいか」


「…………」