「そういえば支配人は?」


「……少し前から見てないです」


「見てないって…、あなた婚約者でしょう?時期当主の妻になるのよ?旦那様の行動を把握していないでどうするの!」


「…だって、」


「だってじゃない!!いいからさっさと探してくる!吉野様は支配人とも仲の良いお方なのは知ってるでしょ!」


「…はい」



私の世話役でもある透子(とうこ)さんこそ、華月苑の顔だ。


私がこの家に引き取られた当初からお世話をしてくれていたが、どんなに頑張っても私が焦がれ求めた温もりは感じられなかった。


この人も仕事として、やっている。

あわよくばこの旅館の女将という地位を奪うため。



「……このままどっか行っちゃえばいいの」



帰ってこなくていい。

どうせ帰ってきたって、ろくな人じゃないのだから。