「はあ…、もういいわ、結局いつもあたしが行くハメになるんだから。次はこのあといらっしゃる吉野様のお出迎え、忘れないようにね一咲(かずさ)」


「え…、いらっしゃるのですか…?かなり外は荒れています、が…」


「来るに決まっているでしょう。ほら、言わなかったら忘れてた。あなたはこれから華月苑の顔になっていかなくちゃなんだから、しっかりしなさいよ!」



ただ、これだけは。

どんなに晴れ晴れとした青空が広がっていたとしても、私に対する当たりの強さは変わらない。


小さな頃から徹底されてきた礼儀作法と身だしなみは、この未来のために叩き込まれたもの。



「あら?ちょっと一咲、」



ふと、今度はまた違うことに気づいたらしい。

待ちなさい、と、お出迎え準備に取りかかろうとしていた足取りを止めてきた世話役。