パサッと肩にかけられた上着は彼が着ていた作務衣。

そちらに気を取られている隙を狙ったのか、なかなか気乗りしなかった私の足が気づけばふわっと宙に浮いていた。



「…自分で、歩けます」


「またどこかに行かれたら困る」


「…行かないです、…でも……帰りたくないの…」



なにを子供みたいなことを。
もう十分ワガママしてるよ私。

時期当主の妻らしからぬ行動ばかり。


帰って怒られるの。

迷惑かけたことを謝って、ある程度の処分が下されるだろうから真面目に受けて。


それで、もう2度と今日みたいなことはできなくなる。



「なら、泊まっていこうか」


「…え…?」


「ここは宿がたくさんある。ちなみに俺は金を持っていないし、あったとしてもまだ使い方すら分からないのだが」



自嘲するみたく、ははっと響かせられた。

私を抱える手に力がこもった気がしたから、そこに紛れるみたく身体を寄せる。