「聞いたぞ。ずいぶん彼と仲が良いんだって?」


「……看病を、」


「もう終わったはずじゃないか」



私のことなんか興味がないくせに。

あなたが見ているのは、義姉の愛美。
私に重ねているのは、声だけ。



「っ…、お、音也様を汚してしまいますので…」



近づいてきた唇から逃れるための言い訳。

パッと顔ごと逸らすと、鼻で笑ってきた婚約者。



「忘れてしまわないように言っておくかな」



クスっとこぼして、耳元に熱い吐息。
ゾワリと悪寒が全身を迸る。

離れて、いやだ、気持ちが悪い…。


ハル様に抱きしめられた温もりが消されてしまいそうで、怖くなった。



「お前は俺のもの。この先も愛美として、一生、その身体と声で俺に尽くすんだろ?」



拒否権など、用意されていなかった。


なにを忘れているんだ、と。

まるで私が最初に約束をこじつけたかのように言ってくる。