揺られている。
大きな波が50人以上の乗客を乗せた戦艦を、ぐらり、またぐらりと揺らしている。
────…ちがう、これは、波に揺られているだけのものではない。
朦朧としている意識をどうにか手繰り寄せたはいいものの、腕も足も痙攣を起こし、平常に立ち上がることさえままならなかった。
「……起き…ろ、……伊作(いさく)、」
右に、左に、前に、後ろに。
どこへ視線を移したとしても眠る同胞たち。
その全員が身にまとっていたはずの軍服を脱がされ、白衣を着用していた。
それは自分も同じ。
いつの間に着替えさせられたのか。
「…いさく、…おい、…起きろ、」
この大日本帝国海軍として、立派な海軍兵になろう───、
共に約束を交わした友もまた、だらしなく意識を飛ばしていた。