毎朝私はコーヒーを入れる

豆を挽くと、仄かに、けれど強い存在感のある香りがふわりとする。

その香りは、私には少し大人で、クラクラする。


私は16歳の頃に両親に捨てられた。
と、いうより殺されかけたというのが正しかった。

不景気の最中、父の会社は倒産。
小さくほそぼそしていた生活は、さらに追い込まれた。


そして父は一家心中を図った
奇跡的に私は生き残った。

けれど身内のない私は、ある人に引き取られた。
住み込みのメイドみたいなものとして。


淹れたてのコーヒーを慎重に運び、深い茶色いドアにノックをして部屋へ入る