患者さんの様態が安定しているからという理由で大音総合病院に転院させているらしいのだけれど、さすがにこれはやりすぎなのでは?

「はぁ」とため息を漏らして、頬杖をついてみる。
だって、外科の患者さんだけで90人近くもいる。

明日は3人のドクターが外来に立つ予定だけれど、お薬が欲しいとか突然紹介になったとかで受診する患者さんもいる。

そんな患者さんを含めると、軽く100人は超えるのだ。
ため息も出るって。


「また面倒だとか思ってるのか」

「へっ……!?」


ぼんやりと画面を眺めていると、突然頭の上から低い声が降ってきた。
振り向くと、そこに立っていたのは五十嵐先生。

別に面倒なんて思っていませんけど。
なんて、口が裂けても言えない。


「いえ。患者さんが増えて、医院長も喜んでおられるのでは?」

「医院長?」

「はい。3月の終わり頃に『五十嵐先生が凄腕だ』と期待されているとお聞きしましたので」

「へぇ。そうか」


左から右へと、風のように流れていく五十嵐先生の返事は、明らかに興味がなさそうだ。

そんなあからさまにしなくても。
それより、愛想笑いとかでもできないわけ?

こんな仏頂面して廊下を歩いて、さらには不愛想で。
患者さんに人気がある理由を探ってみてはいるものの、ひとつも見つかりそうにない。