『話しかけるんじゃない』というような空気を漂わせながら、院内を歩いているクセに。
なんて、思っていても言えないけど。
……コンコン
と、軽快に病室の扉を叩く音が聞こえた。
扉の向こう側から顔を出したのは、担当ナースの大貫さん。
「矢田ちゃん。お迎え、来たみたいよ」
「あ、はい! ありがとうございます」
立ち上がって、ベッドの下に準備してあった荷物を手にする。
それなのに、その荷物はすぐに五十嵐先生に取られてしまった。
「俺が持つ」
「え! いいですよ。両親も来てますから!」
慌てて荷物を返してもらおうとしたけれど、さっさと病室を出てナースステーションへと向かって行く五十嵐先生。
仕方なく大貫さんと病室を出ると、2人でナースステーションへと歩いた。
病室を出てしばらく歩くと、すぐに両親の姿が目に入る。
「葵、お帰り」
「お父さん……」
入院中は仕事の都合で面会時間が確保できず、1度も病院に来ることができなかった父。
家では「葵はどうしてる?」と、母に毎日聞いていたみたいで、私の退院日を知って大喜びだったんだとか。
『この話、お父さんには内緒よ』と、母から言われている。
でも、私のことを待っている人がいてくれることは本当に嬉しい。
なんて、思っていても言えないけど。
……コンコン
と、軽快に病室の扉を叩く音が聞こえた。
扉の向こう側から顔を出したのは、担当ナースの大貫さん。
「矢田ちゃん。お迎え、来たみたいよ」
「あ、はい! ありがとうございます」
立ち上がって、ベッドの下に準備してあった荷物を手にする。
それなのに、その荷物はすぐに五十嵐先生に取られてしまった。
「俺が持つ」
「え! いいですよ。両親も来てますから!」
慌てて荷物を返してもらおうとしたけれど、さっさと病室を出てナースステーションへと向かって行く五十嵐先生。
仕方なく大貫さんと病室を出ると、2人でナースステーションへと歩いた。
病室を出てしばらく歩くと、すぐに両親の姿が目に入る。
「葵、お帰り」
「お父さん……」
入院中は仕事の都合で面会時間が確保できず、1度も病院に来ることができなかった父。
家では「葵はどうしてる?」と、母に毎日聞いていたみたいで、私の退院日を知って大喜びだったんだとか。
『この話、お父さんには内緒よ』と、母から言われている。
でも、私のことを待っている人がいてくれることは本当に嬉しい。