詳しいことは知らないけれど、どうやら再婚のよう。
確か12歳くらいの子どもがいて、現在妊娠5ヶ月なんだとか。


「不愛想すぎます。なのに患者さんにはニコニコして……」

「若手ドクターなんてそんなもんよ」


やっぱりそうなのか。
私の勝手な偏見では、どうも年配のドクターの方が優しいような気もする。

『気もする』というより、実際そうだと思う。

世の中の酸いも甘いも経験して、それなりに人生経験を積んだドクターは優しい。


「はぁ……そのうち慣れますかね?」

「慣れるでしょ。あ、ほら。噂をすれば」


そう言った森脇さんの視線の先には、五十嵐先生。

外来終了後に「回診に行く」と言ってさっさと病棟へと上がったけれど、どうやら何事もなく終わったようだ。


「矢田さん。さっきの書類、ちゃんと届けてくれた?」

「え、はい。病棟のクラークさんに預けました」

「うん。それならいい」


それだけ言うと、踵を返して再びどこかへ行ってしまった五十嵐先生。

な……なんなの、あの態度は。
自分から頼んだくせに確認してくるなんて、どれだけ私のこと信用していないのよ。

やっぱり、ちょっと苦手かも。


「ふふ、確かに不愛想っぽいわね」

「でしょう? 診察介助、やり辛くて」