「嘘じゃないって」と、恥ずかしそうにそう言った五十嵐先生。

まさか、そんな理由があったとは。
てっきり以前のことがあったから、できるだけ早く帰らせてくれたのだと思っていた。

もちろんその理由もあると思う。
でも、それが私を好きだからだったとは……。


「これ、一目惚れかも」

「えー。でも、全然そんな風に見えませんでしたよ? ずっと不愛想でしたから」

「あぁ……それは悪かった」


目を泳がせながら謝る彼がおかしくて、少し笑った。

そっか。自覚はしていたんだ。


「今のこの治療が終ったら、まずは俺と出掛けない? 返事は、それからでいい」

「……わかりました」


五十嵐先生の提案に、小さくコクリと頷いた。

私がすぐに返事ができないことをわかって、そう言ってくれたのだろう。
そういうところも、彼の優しさなのかな。


「ありがとうな」


そう言いながら五十嵐先生は私の頭をポンポンとすると、病室から出て行ってしまった。

……この状況で、まさか告白されるなんて思ってなかった。
しかも、相手は五十嵐先生。

予想外のことが起きすぎて、さっきまでのイライラはもうどこかへ吹っ飛んでいる。


「変な人だな……」


静かになった病室で、1人呟く。

やっぱり、私から見た五十嵐先生はまだまだ不思議な人だ。