恋愛対象どころか、苦手対象だ。

歓迎会のときは、この不愛想な性格の裏に隠れている優しさも見えた。

でも、それは誰に対しても見せている優しさだと思っていたし、その後の勤務中だってなにも変わることはなかった。
五十嵐先生は、違ったの……?


「付き合っている男でもいるのか?」


ずっと黙ったままの私に、質問を投げかける五十嵐先生。
私は、すぐに首を横に振った。

違うの。そんなんじゃない。

五十嵐先生の気持ちは嬉しい。
でも、私は今病気と闘っているから。

ほかの女性とは違って髪の毛も失ったし、これからも治療は続く。

そんなことを考えるとキリがないのかもしれないけれど、五十嵐先生はほかの女性と付き合った方がいいと思う。


「私……今、病気だから」

「そんなこと気にしてたのか。俺、矢田が病気だろうとそうでなかろうと、告白するつもりだったけど?」

「え?」


驚いて、五十嵐先生の顔を見上げた。
その距離があまりにも近くて、ドキッとしてしまう。

それってもしかして、ただ純粋に私を好きってこと?
全然そんな風に見えなかったのに。


「歓迎会のとき矢田を早く帰らせたのも……まぁ、な? ほら、ほかの男に襲われたりするのが嫌だったから」

「え、嘘でしょ?」