それは、私の思い込みだったんだ……。


「あ、あの……もう、大丈夫ですよ?」


いつまでも私を抱きしめたままの五十嵐先生に、声を掛ける。
自分から離れようと身体に力を入れると、やっとの思いで身体を離してくれた彼。

離れた五十嵐先生の顔を見ると、とても真剣な眼差しを私に向けていた。

そして、とんでもないことを口にした。


「矢田の治療、俺も一緒に乗り越えさせて欲しい」


「……え?」


言葉の意味を理解するのに、時間がかかった。

一緒に乗り越える?
それは一体、どういう意味なの?


「仕事も治療も頑張る矢田が、好きだ」


面と向かってそう言われ、体温が一気に上昇するのがわかった。
突然の思考に頭がついていかない。

もしかして今、告白された?


「え……あの、それって?」

「……何度も言わすなよ」


頭の後ろをガシガシと搔きながら、五十嵐先生は恥ずかしそうにしている。

それでも、もう一度私のことを抱きしめると「矢田が好きだよ」と言ってくれた。


「だから、辛いことも一緒に乗り越えたい。ダメか?」

「え……ダメっていうか」


今は、戸惑いの方が大きい。

だって……今日まで1度も、五十嵐先生のことを恋愛対象として見たことがなかったから。