状況を理解した大貫も、涙を流しながらその場を離れる。
泣くな、泣くな大貫。
そんなことを思いつつ、俺はゆっくりと葵に近付いた。
ちょうどそのとき葵の両親も病室に到着したようで、息を切らしながら葵のベッドサイドに駆け寄る。
「……葵、聞こえるか?」
俺の声に反応した葵はゆっくりと目を開け、顔をこちらに向けた。
「たく、ま……来て、くれたの……?」
「あぁ。診察の時間だ」
きっとこれが、最後の診察。
「なんか、朝……頭がね…ボーっとして……」
一生懸命状況を説明しようとしてくれる葵の手を、ぎゅっと握った。
まだ……まだ、暖かいじゃないか。
それなのに……。
「そうか。葵、よく頑張ったな。もう、大丈夫だ」
震える声で、なんとか葵に話しかける。
まだ人間としてのぬくもりは残っている。
それなのに、なんでこんなことを言わなければならないんだ……。
「葵……葵、愛してる。これからも、俺の妻は葵だけだ」
掠れた声でそう言うと、葵は微かに笑みを浮かべた。
そして俺だけに聞こえるようなか細い声で、こう言った。
「幸せになってね、匠真」
それが、葵と交わした最後の会話だった。
泣くな、泣くな大貫。
そんなことを思いつつ、俺はゆっくりと葵に近付いた。
ちょうどそのとき葵の両親も病室に到着したようで、息を切らしながら葵のベッドサイドに駆け寄る。
「……葵、聞こえるか?」
俺の声に反応した葵はゆっくりと目を開け、顔をこちらに向けた。
「たく、ま……来て、くれたの……?」
「あぁ。診察の時間だ」
きっとこれが、最後の診察。
「なんか、朝……頭がね…ボーっとして……」
一生懸命状況を説明しようとしてくれる葵の手を、ぎゅっと握った。
まだ……まだ、暖かいじゃないか。
それなのに……。
「そうか。葵、よく頑張ったな。もう、大丈夫だ」
震える声で、なんとか葵に話しかける。
まだ人間としてのぬくもりは残っている。
それなのに、なんでこんなことを言わなければならないんだ……。
「葵……葵、愛してる。これからも、俺の妻は葵だけだ」
掠れた声でそう言うと、葵は微かに笑みを浮かべた。
そして俺だけに聞こえるようなか細い声で、こう言った。
「幸せになってね、匠真」
それが、葵と交わした最後の会話だった。