「そういえば、矢田ちゃんは? 彼氏いたよね」

「あ……」


やっぱり、聞かれると思っていた。
というのも、私に彼氏がいることを知っているのは森脇さんだけだから。


「それが、別れたんです」

「えっ!? まじで?」

「はい。彼、浮気相手を妊娠させたみたいで」


信じられない。というような表情で、目を丸くしている森脇さん。

それもそのはず。
少し前までは、私たちにも結婚の話が出ていたのだから。

それなのに、親へのあいさつを控えたところで、彼が浮気を暴露してきた。
しかも、相手は妊娠していうという。

私はもちろん『彼との結婚はありえない』と、その場で別れた。
もしこのままバレずにいたら、いったいどうしていたのだろうか。と考えるだけでも、胃が痛くなる。


「最低。でも、もっといい人いるから大丈夫よ。男なんて、その人だけじゃないんだし」


ぽんぽんと、背中を叩いて励ましてくれる森脇さん。

でも、彼女の言う通りだと思う。
私だけを大切に思ってくれる男性はほかにもいるだろうし、付き合いが浅かったからなのか未練もない。

未練というよりかは悔しさの方が勝っていて、涙も出なかった。


「もっといい人探さないとですね」

「うん。いい人いたら紹介してあげるよ」