私を悲しませまいと、一生懸命明るい未来の話をしてくれていた。

でも、もしかしたら。
『なにもできなくてごめんね』って、そう思っていたかもしれない。

彼女は口に出しては言わなかったけれど、衰弱した私を見て、辛い思いをしていたのかもしれない。


「葵……俺はまだ、葵にそばにいて欲しい。俺の横にいるのは、葵じゃないとダメなんだ」


私の顔を見ながら、必死でそう言った匠真。
目には、涙が浮かんでいる。

……あぁ。私、自分の事しか考えていなかった。

みんな、それぞれ辛い思いをしているはずなのに。
自分のことしか、見えていなかった。

こんなにも、私を必要としてくれている人がいるのに。


「……ごめんなさい」


泣きながら、絞り出すような声で謝った。

私の勝手な発言で匠真まで泣かしてしまって、本当にバカだ。


「泣かないでよ、匠真」

「ふっ……葵が言うなよ」


その匠真の突っ込みがおかしくて、笑ってしまった。
釣られて、匠真も笑っている。

そして、私のおでこにそっとキスを落とした。

メイクもしていなくて覇気がない私のことを、こんなにも愛してくれる匠真。
どんな私でも愛してくれる人がいるって、幸せなんだ。

辛いことばかりに目を向けてるばかりで、そんなことすらも忘れてしまっていた。