「いっ、五十嵐先生。いつの間に……?」

「今だ。それより矢田。お前は飲まない方がいい」

「え……どうしてですか?」

「どうって。またややこしいことに巻き込まれるぞ」


もしかして……この前私が言っていたこと、覚えていてくれたの?

詳しいことはなにも話していないはずなのに。それに、興味なさそうだったのに。
まさか、覚えていてくれたなんて。


「矢田、お前はノンアルにしとけ」


私の返事も待たないまま勝手にタッチパネルを操作して、ノンアルのピーチカクテルをオーダーした五十嵐先生。

まさか、こんな風に心配してくれるなんて思ってなかった。

だってあれは、私がたまたま口を滑らせて話した去年の歓迎会の話。
『今はもう、大丈夫ですから』とも付け加えたのにな。

ちょっと……意外かも。


「あ、五十嵐。いつの間に来てた」

「すみません。今到着しました」

「おいおい、来たのなら言いなよ」


そう言いながら、大貫先生は五十嵐先生の分のビールをオーダーしている。

しばらくするとオーダーした飲み物が次々に運ばれてきて、全員分が揃ったところで「乾杯!!」という浦邉先生の声と共に、歓迎会がスタートした。

あっという間に五十嵐先生の周りには職員が集まり、以前の病院のこと、大学時代のことを質問責めされている。