いつの間にか店内には見慣れた顔ぶれが揃っていて、仲が良い人たち同士が固まって話をしていた。
森脇さんもケモ室のナースがいたようで、そちらへと向かって行く。

今日は、去年よりも賑やかだな。


「ごめんね。まだ主役の五十嵐が来てなくて」


申し訳なさそうに口を開いたのは、浦邉先生だ。

彼は外科部長である大貫先生をかなり信頼しており、基本的にいつも一緒にいる。
仕事熱心、愛妻家で、つい先日には第1子となる女の子が産まれたんだとか。


「呼び出しですか?」

「うん。ちょっと病棟の患者さんでね」

「そうですか。大変ですね」

「まぁ、早速信頼されてるのかな」


「そうかもしれませんね」と言いながら、テーブルの端っこに腰かける。

だいたいの人数が集まったところで、幹事である大貫先生がみんなに聞こえるような大きな声で話し始めた。


「えー。主役がまだですが、時間ですので。みなさん、それぞれ注文を」


その声を合図にナースたちがタッチパネルを操作し始め、飲み物をオーダーしていく。
私は、ビールは苦手だし。ピーチチューハイで乾杯しようかな。

そう思って、タッチパネルを操作しようとしたとき、誰かの手によって阻止された。

驚いて後ろを振り向くと、そこにいたのはーー五十嵐先生。