「ふぅ。森脇さんも大変だ」


ボソッと呟いてから、私は電子カルテの電源を落とした。

明日も、大勢の患者さんが治療を受けにやって来る。
私ができることなんて限られているけれど、少しでもみんなの力になれれば。

そんなことを考えながら、私は外来をあとにした。


* * *

そして、例の歓迎会の日。
勤務が終わり一旦帰宅後、私は会場である居酒屋『互縁(ごえん)』に向かっていた。

参加者の中には、仕事終わりにそのまま参加する人もいる。
お店の近くまで行くと、私に気が付いた森脇さんがこちらに向かって手を振ってくれた。


「矢田ちゃーん、こっち」

「お疲れ様です。お待たせしてすみません」

「いいよ。まだ半分くらいしか揃ってないみたいだし」


そう言いながらお店のドアを開けて、中に入って行く森脇さん。

彼女に続いて中に入ると、外科部長の大貫(おおぬき)先生、外科医長の浦邉(うらべ)先生が予約席に座ってなにやら資料を見せ合っていた。

……ここまで来て、仕事の資料広げなくてもいいのに。
本当、ドクターは休みなしだ。


「大貫先生、浦邉先生、こんばんは」

「おー! お疲れ。そろそろ女性陣も揃ってきたかな。森脇さんも矢田さんも座ってて」


きょろきょろと店内を見渡しながら資料を閉じたのは、大貫先生。