あっという間に、私が家に帰る日がきた。
「今までお世話になりました。ありがとね、瑠奈」
「ねぇ、やっぱり一緒に暮らさない?」
寝巻き姿のまま、私に心配そうにそう言った。
「あの家は、お母さんが3代目なの」
「3代目?」
どう言う意味?とう言うように首を傾げて、そう聞いてきた。
「私たちが住む前には、おばあちゃんが、おばあちゃんが住む前には、ひいおばあちゃんが住んでいたの。だから、ローンもない」
「それは高校生の朱音にとっては、嬉しいことだね」
ローンがないのは嬉しいし、
「私の勝手であの家を捨てれないしね」
受け継がれてきたことにはきっと意味があるから。私が売っちゃったら、その意味がなくなる。
「そっか。何かあったら連絡してね」
「うん」
そんな約束をして、私は瑠奈の家を出た。