「京野さんと今井上司……?」


安田が唖然として呟く。


確かに、闇夜を切り裂く悲鳴をあげたのは久美のようだ。


久美は仕事着のままで今井にすがりついている。


「やめろよこんなところで」


今井は周囲の視線が気になるようで、小声で久美をたしなめている。


(これって修羅場だよね!?)


思いがけない場面を見てしまった澄恵は咄嗟に視線をそらせた。


昨日は今井の奥さんが会社へ押し掛けてきたというし、2人の関係が終わるのは確実だと思っていた。


でもまさか、こんな場面をみてしまうなんて……。


「行こう」


安田はそう言い、澄恵の手を握り締めて歩き出したのだった。