一方、心春はというとほんの最近まで、俺のことはただの"幼なじみ"にしか見ていなかった。
アイツは「私の方がずっと前から好きだったよ」と言うけれど、絶対俺の方が片思い歴が長いのは間違いない。
そんなことさえ気づかない心春は、昔から超がつくほど鈍感で。
でも、俺からしたらそのおかげで、都合がいいこともあったんだけどな。
心春は、俺が言うのもなんだがそこそこ可愛い。
それに、性格も明るくて、優しいし小学校の頃からクラスの男子にかなり人気があった。
『なぁ、心春ってクラスの女子の中で1番可愛くね?』
『わかるわかる。それに優しいし、笑うとさらに可愛いよな〜』
放課後の教室で、そんな会話を偶然聞いた時は、かなり焦ったのを覚えている。
「ま、心春が鈍感でその時は、助かったけどな…」
未だに気持ちよさそうに眠る心春に俺は、近くに置いてあった毛布をソっとかけた。
それにしても、心春が中学時代、女子生徒から呼び出しをくらっていたって言うのには驚いた。
高校の入学式後。
『夏希モテるからさ…。幼なじみっていうこと他の子にバレると…後々、絡まれたりするかもだし』
そう言ったアイツは、言いづらそうに視線を背けてたっけ?
俺に気遣って、今まで黙ってたことは明白だった。