「心春。俺注文したの受け取るから先、席に座って待ってて」
「うん。わかった!」
注文を終えた私は、夏希に頼まれて先に席を確保しようとキョロキョロ辺りを見回す。
この時間帯って、わりと学生とか電車待ちの社会人とかも多いんだよね。
なかなか空いている席を見つけられなくて困っていると。
「あれ?峯さんじゃん。駅で会うの珍しいね」
聞き覚えのある声が聞こえ、私は声のした方向に視線を移した。
「わ。向井くん。偶然!電車通学なの?」
声をかけてきたのは、まさかの向井くん。
「まぁね。電車の時間までカフェで明日提出の課題してたんだ」
そう言う彼のテーブルの上には、英語の教科書やノートが広げられていた。
え、偉い。てか、明日提出の課題あるのすっかり忘れてた…。向井くんのおかげで思い出せたよ。
「てか、峯さん1人?よかったらこっちの席空いてるけど」
「あ。ううん、1人じゃなくて…」
わざわざ席を勧めてくれる向井くんに対して、返答したのとほぼ同時に。
「残念。実は、俺もいるんだ」
ひょこっと私の背後から、夏希が手に注文した飲み物を持ってやってきた。