「私は静かに過ごしたいんだけどね…」

「目立つ人が幼なじみだと、周りまで注目されるからなぁ」

「…そうなの。そうなのよ!向井くん!わかってくれる!?」

聞き上手の向井くんは、その後私の愚痴を「うんうん」と相槌を打ちながら嫌な顔1つせず、聞いてくれて。

「まぁ、席も近いし仲良くしてよ」という彼の言葉をきっかけに、私はその日から、ちょこちょこ向井くんと話すようになった。

話をしてみると、向井くんはどうやら学年次席の準特待生。

「うちは俺が小さい頃に両親が離婚してさ、今は母と二人暮らしなんだ。だから、なるべく勉強頑張って授業料免除してくれる学校選んだんだよね」

そう言って「だから成績落とせないんだよ」爽やかに微笑んだ彼に私は感心してしまう。


それに「向井くん、頭もいいし。謙虚だし。今時こういう男子も珍しいわよね〜」と、男子へのジャッジが辛口な沙奈ですら褒めていた。

「確かに向井くん、考え方も大人だし。良い人だよね」

「まぁ、あぁ言うタイプは恋愛面で考えると"良い人"止まりで終わっちゃいそうだけど。結婚するなら向井くんタイプはオススメよ?」

「あ、なんかわかるわ。良いお父さんになりそうだよね〜」