そこで俺は座り込んでいたのを思い出し、腰を上げて歩き出した。
でもなんかそう...あれだ。
長年付き添ってきたものだけが分かる感覚的な。
そういうのが伝わってくる感じがした。
少し照れたように頬を赤らめているお嬢様を見て、思わず可愛らしいと思ってしまった。
それで、お嬢様の細くてふわふわとした髪に触れたのだ。
... いや、本当は逆かもしれない。
お嬢様に、杏優様に触れたいと思った時にはもう髪に手をやっていた、という表現の方が正しいのだろう。
『寝癖』というお嬢様に触れる口実を俺は、善意という殻を被せて存分に使わせてもらった。