普通に家に通されて、普通にいつものようにテーブルに案内されて。

深田はまるで、本当に何事もなかったかのように振る舞う。

「なにがいーい?」
「……緑茶をお願い」

素がバレてしまった手前、完全に前のようにとはいかないけど、気にしないようにしながら私は答えた。

いつものように深田がキッチンから戻ってくるのを待つ。

私のオーダー通り緑茶を持ってきた深田からそれを受け取ると、気まずさから目を逸らしてしまった。

「花綵、さっきの気にしてる?」

きっと分かっているのだろう。

それでわあえて聞いているんだ。

「気にならないって言ったら嘘になるけど、別にどうにかしてまで聞こうとは思ってない」

そう答えると、深田は力無く微笑んだ。

「やっぱり花綵は優しいね」

あまりにも悲しすぎるその笑顔に私は何も言えなかった。

「───でも、いずれ花綵には言おうと思ってた。だから、言ってもいい? むしろ、聞いてほしいんだ。俺のことが嫌いになってもいいから」

いつもの強くて優しい深田の姿はなかった。あまりにも弱々しく、私の心臓は締め付けられたかのように痛んだ。

「俺ね、3年前まであいつと……恣羅と付き合ってたんだ」

まさか、深田の方から話してくれるとは思ってもみなかった。