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小学校からずっと一緒で、クラスも一緒で。
それで、小4の時にふたりで約束したんだ。
もし来年クラスが変わっても、ずっと友達でいようって。
それで、クラスは変わらなかった。
5年になってすぐ、あいつの方から言ってきたんだ。
『もし、今年もクラスが別れなかったらいうって決めてたの。好きです。付き合ってください』ってね。
俺も、あいつに気がないわけじゃないし、他にそういうやつもいなかったから頷いた。
恣羅が変わったのは、そこからだった。
俺に近づく他の女子たちに過剰な嫌がらせをしたり、所構わずくっつきまわって牽制したりし始めた。
最初は、少し過剰だとは思ったけど、自分は愛されているのだと感じることができた。
でも、日が経つにつれ、嫌がらせは激化していった。
元々クラスでも目立つタイプで、恣羅が誰かひとりを敵に回すと、クラスの全女子がそいつの敵になった。
恣羅は自分でそれを分かっていて、わかりやすく標的を定めた。
集団無視、いたずら、物を隠す。
典型的なイジメであった。
恣羅は冷たく見るばかりで直接手は出さなかったものの、それでも真ん中に立っているのはいつも恣羅だった。
ひとり潰したらまたひとり。その子も潰したらまたひとり。
恣羅の異常なまでの独占欲に誰もが引き、そして、俺には誰も、男子でさえも近付かなくなった。
教師どもは分かっていてスルーしている。
中学は地区の中学だったから、あがってくる顔ぶれは小学校とさほど変わらない。
誰だって恣羅と俺を遠ざける。
そんなある日、いじめられっ子からの逆襲が始まった。
最初は、ほんの小さな違和感だった。
教科書が消えただノートがないだ。それだけだった。
誰もが“忘れただけ”と済ました。
でも、それは段々激化していく。
上履きがない、机に悪口が書かれている、足を引っ掛けられる。
さらには、集団無視や直接的に手をくだされることもあった。
俺は、呆れた。
そして同時に“女子”という生物に対して恐怖を覚えた。
自業自得。
それでも、助けようと手を差し伸べたことはあった。
「恣羅、大丈夫? 何かあったら俺に相談して」
「? なんのこと? 恣羅は全然大丈夫だよ」
拒絶したのはあっちだ。
それから俺は、彼女である恣羅に極力関わらないようにした。
俺は、「助けて」と言われなかったばかりか、明らかな壁を感じ取り、恣羅から離れた。
それが、恣羅をさらに追い詰めた。
中3のある日、恣羅は学校に来なくなった。
すると、今までピリついていた教室の空気が一気に和らいだ。
それほどまでに、恣羅は嫌われていたのだ。
そして、俺は何も知らないフリをした。
ずっと付き合っていたかったわけではないし、もううんざりしていたところもあったが、何がどうであれ人として最低なことをした、それだけは自覚していた。
恣羅の家を訪ねた。
別れを告げるために。
俺は、もうお前とはいられない、と。
そう告げるために。
「白澄……? っ、白澄!!」
最初は戸惑った様子を見せたが、次の瞬間には嬉しそうに微笑んだ。
「白澄、なんで急に」
「俺は、もうお前とはいられない。俺は、お前にどうしても償いきれないことをした」
「……ぇっ、なんで、白澄。恣羅、何かした? それなら直すからっ!」
「言ったとおりだ。……今まで4年間ありがとう。それと、ごめん」
それだけ言って、俺は恣羅と別れた。
それから卒業まで、恣羅が学校に来ることはなかったけど、でも毎日のように俺の家を訪ねてきた。
しかも、夜遅くに。
「なんで?」「恣羅の何がダメなの?」「恣羅は白澄の彼女だよね?」
毎日のように同じ会話をして、何度も追い返した。
それでも、恣羅は毎日のように訪ねてくる。
ずっと追い返し続けていたら、2日に1回くらいの頻度になった。
それは、3年経った今でもずっと続いている。
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小学校からずっと一緒で、クラスも一緒で。
それで、小4の時にふたりで約束したんだ。
もし来年クラスが変わっても、ずっと友達でいようって。
それで、クラスは変わらなかった。
5年になってすぐ、あいつの方から言ってきたんだ。
『もし、今年もクラスが別れなかったらいうって決めてたの。好きです。付き合ってください』ってね。
俺も、あいつに気がないわけじゃないし、他にそういうやつもいなかったから頷いた。
恣羅が変わったのは、そこからだった。
俺に近づく他の女子たちに過剰な嫌がらせをしたり、所構わずくっつきまわって牽制したりし始めた。
最初は、少し過剰だとは思ったけど、自分は愛されているのだと感じることができた。
でも、日が経つにつれ、嫌がらせは激化していった。
元々クラスでも目立つタイプで、恣羅が誰かひとりを敵に回すと、クラスの全女子がそいつの敵になった。
恣羅は自分でそれを分かっていて、わかりやすく標的を定めた。
集団無視、いたずら、物を隠す。
典型的なイジメであった。
恣羅は冷たく見るばかりで直接手は出さなかったものの、それでも真ん中に立っているのはいつも恣羅だった。
ひとり潰したらまたひとり。その子も潰したらまたひとり。
恣羅の異常なまでの独占欲に誰もが引き、そして、俺には誰も、男子でさえも近付かなくなった。
教師どもは分かっていてスルーしている。
中学は地区の中学だったから、あがってくる顔ぶれは小学校とさほど変わらない。
誰だって恣羅と俺を遠ざける。
そんなある日、いじめられっ子からの逆襲が始まった。
最初は、ほんの小さな違和感だった。
教科書が消えただノートがないだ。それだけだった。
誰もが“忘れただけ”と済ました。
でも、それは段々激化していく。
上履きがない、机に悪口が書かれている、足を引っ掛けられる。
さらには、集団無視や直接的に手をくだされることもあった。
俺は、呆れた。
そして同時に“女子”という生物に対して恐怖を覚えた。
自業自得。
それでも、助けようと手を差し伸べたことはあった。
「恣羅、大丈夫? 何かあったら俺に相談して」
「? なんのこと? 恣羅は全然大丈夫だよ」
拒絶したのはあっちだ。
それから俺は、彼女である恣羅に極力関わらないようにした。
俺は、「助けて」と言われなかったばかりか、明らかな壁を感じ取り、恣羅から離れた。
それが、恣羅をさらに追い詰めた。
中3のある日、恣羅は学校に来なくなった。
すると、今までピリついていた教室の空気が一気に和らいだ。
それほどまでに、恣羅は嫌われていたのだ。
そして、俺は何も知らないフリをした。
ずっと付き合っていたかったわけではないし、もううんざりしていたところもあったが、何がどうであれ人として最低なことをした、それだけは自覚していた。
恣羅の家を訪ねた。
別れを告げるために。
俺は、もうお前とはいられない、と。
そう告げるために。
「白澄……? っ、白澄!!」
最初は戸惑った様子を見せたが、次の瞬間には嬉しそうに微笑んだ。
「白澄、なんで急に」
「俺は、もうお前とはいられない。俺は、お前にどうしても償いきれないことをした」
「……ぇっ、なんで、白澄。恣羅、何かした? それなら直すからっ!」
「言ったとおりだ。……今まで4年間ありがとう。それと、ごめん」
それだけ言って、俺は恣羅と別れた。
それから卒業まで、恣羅が学校に来ることはなかったけど、でも毎日のように俺の家を訪ねてきた。
しかも、夜遅くに。
「なんで?」「恣羅の何がダメなの?」「恣羅は白澄の彼女だよね?」
毎日のように同じ会話をして、何度も追い返した。
それでも、恣羅は毎日のように訪ねてくる。
ずっと追い返し続けていたら、2日に1回くらいの頻度になった。
それは、3年経った今でもずっと続いている。
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