「花音っ! 次だよ、二年!」




こころちゃんに強めに肩を叩かれて、現実世界に引き戻される。
気づいたときにはもう、スターターピストルが放たれていた。




…やばい。
耳になにか詰まってるみたいに、音がこもって聞こえる。



自分のことじゃないのに、緊張しすぎでしょ…っ。




一人目から順に、バトンが渡っていく。



そして、アンカーから二番目。
絃くんの手にバトンが渡された。





「が、がんばれ…っ」




無意識にそう口から出るほど、わたしはそのリレーに釘付けだった。



絃くんが風をも無視して全速力で駆け抜けていく。
コーナーも華麗な足取りで通り過ぎて、もうすぐ尊くんの番だ…。