「…だから、俺のことだけ見てて」
さらに追い打ち。
…尊くんだけ、って、そんなの。
心臓が鼓動を速めて、少し痛い。
こんな経験はじめて。
だけど、なぜだか。
尊くん、絶対勝ってね…って、思った。
「ん。がんばっ…てね、尊くん…」
「あは。がんばる」
一度だけ笑って、尊くんは立ち上がって男子の席に戻って行ってしまった。
…ど、どうしよう。
今日の選抜リレーでうちのクラスが一位を取ったら、尊くんとデートをすることになるかもしれないんだ。
そう思ったら、顔の火照りは収まらなかった。
途中、応援に疲れたこころちゃんがわたしの顔を見て、驚いた顔をして…。
「…花音、どしたの? 顔真っ赤だけど…」
そんなことを聞いてくるものだから、余計に顔が熱くなった。