こころちゃんの声で、みんなの視線がグラウンドに集まる。
ムカデ競争かぁ…。
わたしたちも去年やったなぁ。
パンッというスターターピストルの音で、みんな一斉に走り出した。
右、左、右…という声が響く。
周りのクラスメイトたちも盛り上がって喧騒が大きくなる中。
尊くんが、わたしの隣にしゃがんだ。
そして、今度は耳元で、わたしだけに聞こえるようにつぶやく。
「花音」
「…どうしたの?」
「選抜で一位取ったら、俺とデートしてよ」
顔が熱を帯びる。
…あつい。初夏のせいだけじゃない。
デート…という響きは、あまりにわたしには似合わなくて。