「ねぇ、花音」
「……どうしたの?」
「お腹すいてる?」
時間としてはもう夕方。
そろそろご飯を食べ始めてもいいくらいだね。
「ちょっとすいてるかも、どこかお店入る?」
「……あ、それなんだけどさ」
いつもすらっと物を言ってのける尊くんが、珍しく言葉に詰まっている。
立ち止まって、しばらく目を泳がせたあと言いづらそうに口を開いた。
「……俺の家来ない?」
「えっ」
びっくり。
まさかの提案すぎる。
……わたしなんかが、いいんですか。
そういえば、この前尊くんが風邪ひいた時に一回お邪魔したっけ。
この前は家に誰もいなかったけど。
…今日はクリスマスだし、もしかして御家族がいるんじゃ?
……でも、せっかくのお誘い、無下にするわけにはいかない。
それに、行きたいし、尊くんの家。
わたしは震える唇で返事をする。
「……行く、行きます、」
その変な日本語に笑われながら、わたしたちは尊くんの家へと向かった。