尊くんは、毎度のことながらスマートだ。



当たり前に車道側を歩いてくれるし、自然に繋がれた右手は軽く熱を持つ。




わたしも力強く握り返したいけど、こうして添えるだけで精いっぱい。




…尊くんって、女の子の扱い慣れてるけど、元カノとか何人くらいいるんだろう。




そういえば、聞いたことないかも。
わたしは五月のデートのときに、元カレがゼロ人だっていう恥ずかしい事実を知られてしまった気がするけど。




…でも、聞かないほうが幸せなことってあるよね。



うん、その話は、いつかわたしに余裕ができたときに聞こう。





「花音、寒くない?」


「大丈夫だよ」





わたしの顔をのぞき込んでそう聞いてくる尊くんに、わたしはまた恋焦がれる。
ドキドキして体中熱いから、寒さなんて感じないよ。