「尊くんっ」


「うお、びっくりした」




期待した通り驚いてくれちゃう尊くんに笑いながら、買ったばかりのショルダーバッグのひもをぎゅっと握る。



…どうしよう。
近くで見るとますますかっこよくて、ドキドキする。





「本当はさっきから見つけてたんだけど」


「え、そうなの?」


「……遠目から尊くんを見つめてたら、遅くなりまして」




ごめんね、と小さく謝れば、彼はみるみるうちに顔を赤くする。



その赤面、寒さのせいではないって……うぬぼれてもいい?





「なんだよそれ、……声、かけてよ」


「うん。今度からは…」




はやめに声をかけるね、と言いかけたところで言葉を詰まらせたのは。



”今度”というワードに、自分で引っかかったからだ。




…次もデートできる保証なんてないし。
今日が失敗だったら、もう二度と次なんてこないかもしれない。




だから、怖くて、出しかけた言葉が引っ込んだ。