しかも、こんな逃げ場を確保しようもない場所に連れ込んでまで。
…卑怯、だ。でも反論なんかできない。
わたし、なにもしてないから。
…良くも悪くも、なんにもしてないんだ、ほんとうに。
尊くんの優しさに付け込んでそばにいさせてもらってただけで、好きだと自覚したところでなんの行動もなし。
だから、怒られて当然だし、怒られる筋合いなんかない…と言えば、そうだし。
「聞いてる? 小波さん」
「…は、はい」
どうしよう。
とりあえずこの場を打開しなければ、最悪の事態になりかねない。
…いやもう、”最悪の事態”に片足突っ込んでる状態ではあるんだけどね。