「盗聴は二度としないし、ネットの繋がりも断つよ」

朔は、香袋を掴んだ時に一緒に出てきた盗聴器を左手に持ち替えていた。

それを地面に落として、足で思いっきり踏みつけた。
パキン、と小さく鳴った音が聞こえた。

私の目の前で盗聴アプリも、SNSのアプリも消した。
それをしたからって、私が見ていないところでまたやろうと思えばいつでもできる。

でも朔の性格上、そうしないってことも私はよく分かっていた。
これは一種の脅しだ。

これで私はもう、自分の気持ちに従って、朔を許すか許さないか。
朔を失くすか、失くさないか…。

私が…悪いのかな…。

「文化祭の犯人だってまだ分かってないだろ」

「うん…」

「心配だったんだ。とにかく心配だったんだよ。シイナにこれ以上何かあったらどうしようって。だからあの先輩のことだって、シイナに関わる者なら全て疑いたくもなるんだよ…。俺は…シイナを守りたいだけだったんだ…。ごめん…」

「うん…分かった…。でも、もうしないで…」

朔を失くすか、
許すか。

その選択肢に悩めるほど、私には朔を失くす勇気が無い。

おかしいことなのに。
許していいわけないのに。

朔を責めたのは私なのに、自分の弱さで正当化しようとしているのも私だった。

「次はもう無いから…。今度したら…」

「別れる?」

「わかれ………」

「シイナ…俺が守るから。正しい方法で。シイナが泣かない方法で。だから俺だけを信じて。本当に好きなんだよ」

「うん…」