「さ…朔…それは…ごめんなさい…。本気かどうか分かんなくて、こんなこと初めてだったからどうしていいか分かんなくて…」

「“あわよくば”って気持ち、少しはあった?」

「あるわけない!」

「どうだか…。だってずっとあいつのこと庇ってんだろ」

「先輩の人間性まで否定されるのは嫌だよ?でも異性として好きで大切なのは朔だけだから!本当だよ」

「…ね?シイナは隙が多いだろ?盗聴器は簡単に仕掛けられて、気づきもしない。それか俺があげた物になんかもう興味も無かったってことかな?他の男の誘いも断れずに夜に二人っきり、まんまと告白までされちゃって、挙げ句に断ることもできない」

「酷いよ…なんでそこまで言うの…。それに朔が何を言ったって朔がヤッたことも交友関係も正当化なんかされないから!」

朔が私のワンピースのポケットに手を入れた。
ビクッと震えた私の肩に気づいた朔は、小さく首を横に振った。

「なんで怖がるの」

引き抜かれた朔の手には、空っぽでヨレヨレになった香袋がぶら下がっている。
檜のチップがポロポロと地面に舞って落ちた。