「盗聴だって酷いよ…。いつからしてたの」

「それは安心して。水曜日…ほら、シイナをバイト先まで送った日。移動教室の隙にね。移動教室の時はスマホ禁止だからさ。置いていってると思って」

そう言えばあの日、科学の時間に朔はトイレに行った。
珍しいなって思ってた。

「大丈夫だよ。盗聴したのはシイナがバイトを上がって帰るまでの時間だけだから。やっぱり彼氏としては不安なんだよ。夜遅くに帰らせることも、この前みたいに違う男と夜に二人っきりになることもね?」

「朔は渚先輩を誤解してる!親切なだけだし、相手が私じゃなくても送ってたよ!」

「だーかーらー、相手がシイナじゃなくてもああやって告ったりするんだ?」

「それは…」

「話すり替えないでよ。俺は心配で盗聴までヤッてしまったし、シイナがそんなに嫌だったんなら悪いことしたなって反省もする。でも俺があの日以来盗聴しなかったのも、ショックだったからだよ」

「…告白されたことが?」

「シイナがキッパリ断ってくれなかったことが」

悲しそうにしていた目が、スッと冷えたのが分かった。

怒りも同情も無い、なんの感情も感じられない目だった。