「…なんて?」

「シイナはさ、自分で思ってるよりも隙が多いよ。つけ込まれやすいから気をつけてね」

「えっと、ごめん。なんのこと?」

「やましいから知らないふりするの?」

朔がフォークを置いて、グラスのレモン水を飲んだ。

紙ナプキンで軽く口元を押さえる仕草も、スラっとした指先も、だけど男性特有の骨骨した手首も、全てが芸術作品みたいに美しい。

でも、この美しい生き物は、時々とても冷たい言葉を私に吐く。

とても優しい口調で。
絶対に有無を言わせない、冷えた温度で。

「やましいって…何が…?朔が何を言ってるのか分かんないよ」

「分かんないわけないだろ。渚先輩。シイナのこと好きみたいじゃん」

ドクンッて心臓が脈を打つ。

急に指先が冷たくなった気がして、
それが私の指先の温度なのか、フォークの冷たさなのか分からなくて、皿の上でフォークの先を伏せるようにして置いた。