「朔?どうしたの?」

「シイナは俺に合わせようとして、あんまり自分の意見を言わないよな」

「そんなこと…。ごめん…、そうかもしれない。でもそれは、自分がしたいことより朔が嬉しいほうが私も嬉しいから」

「じゃあさ、分かった。シイナは俺に合わせて?俺はシイナがしたいことを全部したい。自分のことなんてどうだっていいから。シイナを優先するっていう俺の意思に合わせて?」

「朔…」

「ダメ?」

「ダメ…じゃないけど…」

「ん。約束な」

「分かった」

「じゃあ、何食べたい?」

「えーっと、パスタ…かなぁ」

「うん。決まり!」

そう言って、私達は駅前で高校生に一番人気のパスタのお店に入った。

土曜日のお昼時。
ここもやっぱり混雑していて三十分以上は待った。

店内はほとんど女子高生や大学生を中心に、女性が大半を占めていたけれど、朔は文句一つ言わずに待ってくれた。

ようやく通してもらえた席に、スタッフの女性がレモン水のグラスを運んでくれた。

朔がきのことベーコンの和風パスタ、私はトマトとモッツァレラチーズのパスタにした。

一口食べるたびに、パスタソースが服に飛んでいないか確認してしまう。

「ワンピース、白だから気をつけて食べてね」

「もー。子ども扱いする!」

「シイナはそそっかしいから」

「そうかなぁ」

「だから他の男に隙を与えて、すぐ告白なんかされちゃうんだよ」

運ばれてきたパスタをくるくるとフォークに巻きつけていた。

朔の言葉に自然と手が止まって、フォークに巻かれていたパスタは全部皿の上で落ちた。