どちらかが何かを言ったわけじゃないけれど、私達はそのまま商業施設を出て、適当に歩いた。

「ごめんな。やっぱちゃんと準備しとくんだったな」

「そんなことないよ。どうしても観たい映画があったわけじゃないし!これからどうしよっか?」

「んー、カラオケ…とか?」

「それもヤバそう」

「だよな」

「とりあえずさ、ランチでも行かない?実はちょっとお腹空いてたんだよね。ポップコーン食べようって張り切ってたからさ!もう我慢できない」

「あはは。シイナらしいな」

「どういう意味ー?」

「無邪気だなって意味」

「無邪気?よく分かんないよ」

朔はやわらかく笑って、私の手を取った。

「何食べる?」

「朔は?何がいい?」

「シイナ」

「ん?」

「俺に合わせようとしないで。シイナ、そういう癖、あるだろ」

朔が急に立ち止まる。
気づいたらバイト先のカフェの目の前まで来ていた。