「ごめん。嘘ついた」

「え?」

ちょっと見上げて見る朔の顔は叱られた子どもみたいな表情をしている。

「嘘って?」

「全然元気。具合悪くなんかない」

「そ…っか…」

「シイナが来ないって聞いたから」

「私…?」

「うん。それなら行ってもつまんねーし。ドタキャンした」

朔が言っていることの意味は、その時の私にはよく分からなかった。
混乱していたんだと思う。

初めて聞く国の言葉みたいに、朔の言葉は耳に届くのに、意味を理解する前にスルっと滑り落ちる。

溶けて落ちたアイスみたいに。